
どうして、みんなファッションのことばかりを気にしているのかしら?
うっとりするほど魅力的だから?
それとも、みんなが素敵っていうから、あなたもそう思うの?
私の名前はジェンナ。私はファッションやトレンドのことを気にしたことは一度もないわ。
私が大切にしているのは、美しいものを創り上げていくこと、そしてそれを世界中のみんなと分かち合うこと。
ところが、突然、私はみんなが注目するファッショナブルな存在になってしまったの。
これからその理由を話させてね。
私はとっても普通の女の子だった。
でも、ドールが大好きだったから、子どものとき、ドールのためにお洋服をたくさん作ったわ。
大きなドールもいれば、小さなドールもいたし、頭が大きくて体の小さなドールもいたの。
いろいろな大きさや形のドールに、春、夏、秋、冬のそれぞれの季節に合った、思いつく限りのとっておきのお洋服を作るのが趣味。
スタイルを考えるのは最高に楽しくって、頭のなかはまるでファッションショーみたいだった……。
クール、ポップ、キュート、フレッシュ、ボヘミアン、ゴシック・ロリータ……。
しばらくして、将来どんな仕事をしようかと考えはじめる年齢になったとき、私は迷うことなく"Fashion Institute of Ecstatic Creations"に進学することを選んだの。
そして、その学校は私の世界観を大きく変えてくれた。
卒業後、私はとても評判の高いファッション雑誌の編集部でインターンとして働きはじめた。
そこでは、朝から晩まで時間を忘れて働いたわ。
どんなに小さな仕事も、ひどく急な仕事も、数え切れないほどたくさんのファッションエディターのもとで難しい仕事にも一生懸命に取り組み、ひっきりなしに行われるファッションデザインの発表会に、足が棒になるほど通った。
働くことは本当に大変、でもそれは仕事を学ぶ貴重な経験だと思うの。
素晴らしい仕事は、決して簡単にできることではないのだから。
それに、私は若くて経験もなかったから、いつも学ぶ姿勢でいることができたし、自分の夢をかなえるためのチャンスを与えてもらっていることに感謝でいっぱいだったわ。
あるとき、とうとう自分の力を試す機会がやってきた。
編集部が私に最新のファッションシーンを紹介するためのページを任せてくれたの。
私は、このチャンスを絶対に無駄にしないと心に誓ったわ。
最高のファッションページを創れますように!
ファッションの本当の意味、ファッションのなかにある大切な心を伝えるために!
そのとき、ふと、いままで続けてきた、私のささやかなボランティア活動のことを考えたの。
恵まれない子どもたちを保護するビッグ・シスターズ・プログラムのコミュニティセンターで週末を過ごしたり、シニアセンターでお年寄りのみなさんとダンスを踊ったり、チルドレンセンターのために近所をまわって募金を集めたことを。
本当は、世界平和のために活動するピース・コープで働くことができないかしら、とか、インドに行って、マザー・テレサに人生をささげることができたらどんなに素晴らしいだろう、と願っていたのだけれど……。
でも、どんなボランティア活動も、私にとって自然なことだった。
そうだ!チャリティ・ファッション・エキシビションを取材しよう!
あの表参道ヒルズで行われる第八回チャリティ・ファッション・エキシビションは、世界中のファッションデザイナーが参加し、季節ごとのファッションを、さまざまなカテゴリーのなかで繰り広げる、大きなファッション・イベントだしぴったりだわ!
あっという間に撮影の日がやってきた。
取材する予定のファッション・スタイル、撮影をするフォトグラファー、スタイリスト、メイクアップアーティスト、準備はすっかり整っている。
しかし、どうしたのだろう、モデルがやってこない。
いつまで待っても、やってこない。
どうしましょう?!
もう、目の前は真っ暗。
やっと手にした私のチャンスが、どこかに消えてしまう……。
チャリティ・ファッション・エキシビションのために集まったファッションデザイナーたちの最高のファッションがここにあるというのに、それを身につけるモデルがいないのだから。
「じゃあ、君がモデルになれば?」
フォトグラファーが思いついたように、私にこう言ったの。
すると、それを聞いたスタイリストもメイクアップアーティストもうなずいた。
「そうよ、それはいい考え! あなたがモデルになったらいいのよ!」と。
……私? 私はモデルじゃないわ?
でも、今、私がモデルをしなければ、雑誌のページが完成しないし、もちろんチャリティにも影響がでてしまう。
迷っている場合ではなかった。
わかったわ! 私、やってみる!
私がモデルをしなければ、仕事を達成することができないもの。
私はスタイリストとメイクアップアーティストとともに仕度を整え、一日中モデルとして働き、撮影を終えた。
こうして、雑誌のページは無事に仕上がり、チャリティ・ファッション・エキシビションのプレス向けパーティが行われるまで、編集長さえも、私がモデルをしたことに気がつかなかった。
私が、撮影の日と同じ衣装に身を包み、メイクアップをほどこして、パーティの会場につくと、世界中のセレブリティ、ファッションデザイナー、チャリティにかかわる人々が集まるなかで、予想もしなかった出来事がまた起こったわ。
雑誌がファッションを通じて、とてもよい影響を社会に及ぼしたことで、特別賞を受賞したの!
私は自分の気持ちが伝わったことが本当にうれしかった。
ファッションとは目に見えるところだけが大切なのではない。
ファッションを愛する人々の心が大切なのだから。
さて、私、ジェンナは、相変わらず忙しく、才能を生かしながらファッションの世界で働いている。
創ることを愛し、そして与えることを惜しまない美しい心をもって。